DIYでバイクガレージを作りたい。誰もが描いている夢ですが、叶わないほど遠い夢でもないかもしれません。そんな風に感じさせてくれたのは、波多野さんです。
本業は建築。でも難しいことは一切なしでガレージ作りに関してとてもシンプルな考えの持ち主でした。地道にコツコツ、楽しみながら作るDIYガレージを推奨するその背景には一体どんな思いがあるのでしょうか。
:このガレージ、波多野さんの手作りということですよね?
そうです。床を組んで、壁を立て、屋根をつけただけですけどね(笑)。難しいことはしていませんよ。
:気軽にガレージを作れてしまうのは、はやり本業だからですかね。
とはいっても、僕はもともと住宅メーカーの営業マンだったんです。いまは家業であるこの建築会社を継いでいますが、若い時は家業をつぐことは意識していませんでした。
:会社名からすると、家を作る問いより材料を作る、という会社のようですね。
そうなんです。おかげさまで長いこと仕事をさせていただいているんですが、最初は山師として木を切ることからはじまりました。
そこから切った木を加工する製材業になり、製材ができるようになれば今度は家を建てられるようになったんです。
建築業は3代目からはじまり、5代目の今に至ります。
:販売から今度は作る側になった、ということですね。
販売の仕事をするうちにいつしか『家を作りたいなぁ』思うようになったんです。そう思ったとき、家業があったのは幸いでした。
:このガレージを作ろうと思ったきっかけは何だったんですか?
きっかけはお客様でしたよ。「大事な車をガレージに入れたい」というリクエストを受けたんです。今思えばあれがはじまりでしたね。
:そのお仕事は引き受けたんですか?
当時ガレージを専門につくる業者もいませんでしたし、お客さまの期待に応えたいということもあってお引き受けしたんです。
ただ、自分がガレージをもってみないとお客様の気持ちも理解できない。その思いからガレージを作り始めたんです。
:その心意気、すべての販売者に持っていてもらいたいです。実際にガレージライフを過ごされてみて、どうですか?
何と言っても『遊び場』があることがこんなにも充実感のあることに気づかされました。ガレージは、遊びのステージです。
仕事柄、自宅も当然遊べる基地ではあるのですが、自宅はどうしても奥さんがボスなので笑
:ガレージって、結局何するって、楽しいことするために欲しいわけですからね。
そうですよ笑 だって、それ以外に何かありますか?ガレージが欲しい人で、遊ぶ以外の目的があるとは思えません。たった2畳、3畳のスペースだとしても遊ぶために作れば、それはもう特別な空間になるんです。
:ぼくたちに遊び場が必要な理由ってなんだと思いますか?
遊び場が必要な理由ってのは、ちゃんとあるんです。それは『夫婦円満』です。ガレージを持っている方々の夫婦関係って本当にいいんです。
:ガレージがあること夫婦円満であること、どんな理由でしょうか?
きっとお互いのいい距離感が生まれているからでしょうね。旦那さんは、邪魔扱いされずに上機嫌でガレージでいい子にしていますし、奥さんも家で羽を伸ばして好きなように過ごせる。
:お互い姿を見ないのに、存在感は感じれていられる。
そこが味噌なんです。家の敷地内なので必要なときには声をかけてお茶や食事も一緒にできます。
奥さんも、旦那さんもそれぞれ趣味を満喫し、それでいてお互いが近くにいる安心感があります。実にいい距離感が生まれるんです。
:お互いに干渉されたくないテリトリーを守りながら、一緒にいる時間を楽しめる。理想の形ですね。
『住む』ことが『楽しい』になればお互いの関係がよくなります。
家の中にどれだけ遊べて楽しめるスペースがあるのか。ここが最近の住居選びのポイントにもなっています。
言ってみれば、これこそが家族が仲良くできる要素だと思います。こうした楽しい気持ちが心のゆとりも生み出してくれるんですよ。
:楽しい気持ちになるための趣味だったり、食事だったり、空間だったり。束の間であっても充実感ありますからね。
そうだと思います。このガレージを作る前、何もない状態で「ここをどうしよう、ここでなにしよう?」と考えているときが一番楽しかったんです。
床をつくったらチェック柄にして、壁を作って、メタルラックおいて。なんとなく部屋になった時に気がついたんです。「あれ、ここバイク屋になってる??」って。
:販売から建築、そしてバイク屋さん転身、悪くないと思います(笑)。
こりゃ違う、ってことで床材を板にやり変えたら、ラックもウッドしてみたり。そうこうするうちにキャンプ道具を置いてみようかな、とか。なんか、自由にできるじゃないですか。
:波多さんの話を聞いていると、ガレージはカスタムなんだ、と思えてきました。
バイクもガレージ作りに共通していると思います。スクラップ&ビルドをこの中で行える楽しみ。つまり、カスタムできる喜びがガレージにもあるんです。
わたしたちの家づくりのコンセプトも同じです。箱をしっかりつくりあとは住む人のカスタムを楽しめるようにする。
ガレージやバイクカスタムの魅力は、人の手が入ることで、その人らしさが顕著にあわられます。生活感だったり、哲学だったり。ライフスタイルそのものを存分に楽しむことができます。
:このガレージはどうやって作られているんですか?
実はそんな大がかりなことはしていません。この壁だってパーテーションですから。
要するに、ぐるっと壁で覆って、屋根をペタッとしているだけなんです。驚くかもしれませんが、ここは基礎も何も入れていません。ここはそのくらいフランクに作っています。
:軽い気持ちで、やってみる。まずはそこからスタートですね。
:楽しげなアイテムがたくさんあって、さっきから気になっています。お気に入りのアイテムはどれですか?
モデルガンにはまってるんですよ。
:副業でイノシシでも撃ってるのかと思って気になっていました笑
上のは所さんも持っているモデルです。もともとは樹脂なんですけど、ウッドにすればかっこいいでしょ?質感、重量感、両方あるから気に入ってるんですよ。下のは、ウィンチェスターでターミネーター2でシュワちゃんが使っていたモデルです。
これは完璧なアラレちゃんです。なんと、これフル稼働ですよ。
:どういう意味ですか?頭取れちゃうとか?
頭も取れちゃうし、超合金だし、顔のパーツもあるし、走るポーズもできるし、「んちゃ」のポーズもできます笑
:「キーン」もできますか?
できます笑
:というこは、これ博士が作ったそのままってことですね。
その通り!アラレちゃんは昔から大好きで、DVDもコンプリートしてます。あの地球を割るシーンもバッチリです笑
上の事務所にあるもので、工場を整理していたら出てきたんです。タイヤ好きにはたまりません。
これも事務所にあるものですが、これがあると妙に萌えます。
二眼のローライコードです。味がありますよね。
アルファインダストリーのパイロットヘルメットです。
GB250クラブマンのフルカスタムです。もう乗っていないので今は展示だけで楽しんでいます。
:ちなみにこのヘッドライトについているのはなんですか??
これはサバゲー用の仮面ですね笑 風よけにちょうどいいと思って。
何しろ2つのタイヤがついているものが好きなんです。
むかしのラジオは作りがしっかりしていていいですよ。先代からのこの事務所を整理していたら出てきたんです。革のケースもついていたんですけど、劣化が進みすぎてもうないんですけどね。
ここにあるソファは、捨てられる予定だったのですが、譲ってもらいました。わんちゃんを長く飼われていたので匂いも一緒に引き受けたのですが、なかなか取れなかったんです。
そこで仕事仲間の美装屋さんに聞いたら、この『ファーストチェック』をおすすめしてもらいました。なんと、匂いは完全にとれました。ちょっと怖い話かもしれないのですが、死体の匂いもこれでとれるそうです。かなり強力な消臭剤です。
:普段はここでどうやって過ごしているんですか?
基本的にはこの3つがこのガレージで楽しいことです。いまはお客様の窓口を担当し、デザイン、資金計画をメインに行っています。
その仕事の合間に、くつろぐスペースとして活用しています。ここにきては「次は何しようかな?」なんて企てています。ひらめいたらすぐに動ける環境もここにはありますしね。
たとえばこの『ROUTE261』のステンシルは自作です。これ、目の前の道路なんですけどね笑
あとガレージがあることで、こうやって人と話ができるのがいいですよね。お客さんと話をするときも、このガレージだったりしますよ。
:ガレージは家とも職場とも違う区域の空間で、プライベートでもありパブリック性も高い。なんだか不思議な空間ですよね。ちなみに、次はどこに手を入れる予定なんですか?
中はもういいとして、次は外ですね。ウッドデッキを作って、外も楽しめるようにしたいですよね。ライダーがよくくるので、バイクや自転車もとめられるようしようかなぁと。
:ここに来た人みんなガレージがほしくなりますね。2畳でもできるんなら欲しいです笑
:いま主に乗っているバイクは、どれですか?
この黒い883です。ダイナのローライダーSと悩んだです。でも最初にお店で見た時から、「あ、こいつだ。」と感じていました。そこから1ヶ月悩んです。毎日画像見ながら笑
:決め手は何でしたか?
最終的に決め手になったのは、乗ってる姿を撮影してもらったときに、この883がしっくりきちゃったんです。
デニムペイント、シングルシートのスタイル、そしてラバーマウントエンジンから伝わってくる鼓動感。最高です。
独特な『可愛げ』があると思っています。アクの強い可愛さが、こいつにはあるんです。そしてここのガレージと同じように、これからカスタムできる楽しみもあります。
:SR400もあるし、GB250もあるし、おまけにDAXまで。そしてこのハーレー。バイクに乗るきっかけは?
むかし父親がアクション映画が好きだったんですけど、中でも『ターミネーター2』のインパクトが大きかったんです。
:未来から裸でやってきて、バーで服もバイクもかっさらう、あれですよね(笑)
そう!あれです(笑)。シュワちゃんがハーレーに乗っている姿をみて、「バイクってなんてかっこいいんだ!」と小学生だった私の心に火がつきました。このとき、バイク=ハーレーになったんだと思います。
:僕は、少年のジョン・コナーがオフ車に乗っているのを見て「なんてかっこいいんだ」って思ってました。
ターミネーターの影響力は偉大ですね。シュワちゃんの姿に憧れながらも中型バイクで楽しんでいるうちに、ハーレーのことはすっかり忘れてたんですけどね。
:こうして見てると、複数のバイクが眺められるこの空間はやはり楽しいですね。
そう言ってもらえると嬉しいです、ありがとうございます。バイクの良さって、このコンパクトさにもあると思っているんです。
もしもですよ。車も入るほどの大きなガレージを建てようものなら当然金額も大きくなってきます。でもバイクだけのガレージだとしたらどうでしょう?
バイクが入るくらいのバイクガレージなら、限られたスペースでも作ることができます。そうすると奥さんや家族の理解も得られやすいメリットがあります。
このカジュアルさもバイクガレージの魅力だと思っています。
自分の身の丈にあったガレージを作る。2畳のスペースがあれば、それをどう楽しいスペースにするのか、これを考えること自体が楽しい。今回のインタビューではそんなガレージライフの醍醐味を感じることができました。
特に印象的だったのは、『ガレージ=絶対的スペースが必要』という概念ではなく、「バイクがおけるくらいなら、どうにかなるんじゃない?」と、小さなスペースでもガレージはガレージだ、というフィロソフィーです。
クルマだとできないけど、バイクならできるかも。そんなところから自分でできる範囲を自分で作っていく。やってみたくなりませんか?
ガレージを作ろうと気張るのではなく、まずなんでもいいから作ってみようのスタンスは多くの人を後押ししてくれる気がしています。
壁や屋根は後回しにして、まずは椅子とテーブルから揃えてみるのもいいんじゃないでしょうか。
ガレージがない今からでも楽しめるガレージライフは、たくさんありそうです。
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