バイクガレージ

隣のバイクガレージ:Vol.2『KIICHIRO’s BASE』

2022.9.7
Yuuki Koshiyama

人はなぜバイクに乗るのでしょうか?それは多分、衝撃的な何かがその人に揺さぶりをかけ抑えられない衝動から気がついたらバイクに乗っていた、というのがほとんどなのでしょうか。

Kiichiroさんも例外ではありません。

「アメリカ人はなんてバカな車を作るんだ!?」

その衝撃が現在のガレージライフにつながっているそうです。アメリカ製のクルマ、そしてバイク。さらには国産バイクも複数登場する豪華キャストが揃うガレージ。さぁ、一緒にお邪魔してみましょう。

1. バイクガレージを作るきっかけ

:このガレージに至るまでのきっかけって何だったんですか?

 

すべてはこの1台の『アメ車』から始まったんです。

1982年式コルベット

:まずなんと言っても、このコルベットが気になりますね。個人的にもこの三代目のコルベットが好みなんです。

 

このフォルムはきっと誰の目にも衝撃を与えるんでしょうね。このクルマに出会ったのは私がまだ30代のときで「アメリカ人はなんてバカな車を作るんだろう?!」って度肝を抜かたんです。

その時から「いつか乗ってみたい」と思い続けて1997年ついにようやっと手にれいることができたんです。

購入の予算も確保できたので、全国から探していたら三重県で見つかりました。いろいろ話を聞いてみたら、ある著名な俳優さんが有名になる前に乗っていたそうです。

その俳優さんがこのコルベットに乗っていることはまだ駆け出しだっそうなんですが、一躍有名になってしまって別の車に乗り換えたんです。

そこで、もともとアメリカから仕入れて販売した自動車屋さんが買い戻して「こりゃいい、高値で売れるかも」と期待をしていたそうのですが、その期待とは裏腹に長い間売れずに眠っていたところ私がやってきた、そういう経緯だったそうです。

YAMAHA V-MAX

:Kiichiroさんの乗り物は、どれも筋骨隆々とした印象ですね。コルベット、ハーレー、そしてこのV-MAX。どういう使い分けをされているんですか?

 

実は、このV-MAXは通勤手段で日常の足として使ってるんです。

(画像:Yamaha V-MAX / Wikipedia

:V-MAXが日常の足だなんて、日々の通勤も楽しくなりますね。最初からV-MAXだったんですか?

 

いや、違うんですよ。最初はゼファー400でバイクデビューしたんです。それはそれで楽しんでいたんですけど、周りの仲間たちがこぞってリッターバイクに乗り始めたんです。

(画像:Kawasaki ゼファー 400 / Wikipedia

400ccのバイクでリッターバイク連中と走るとツーリングに行くたびに不便さを感じるようになりV-MAXに乗り換えることになりました。いまは職場までの道のりを往復していますけどね。

YAMAHA Serow 225

 

:じゃ、このセローはどういう使い道なんですか?

 

これは山に入り行く時に乗っています。たまたま安かったので手に入れました。いいバイクですよ。

 

:V-MAXとは対極にあるようなバイクですが、セローもいいバイクですよね。

 

これは94年式のセローで、通勤には使わず、山道を駆け抜けています。

(画像:Yamaha SEROW225 / Wikipedia

 

:林道専用のバイクってわけですね。じゃ、このBIALSはもしや岩専用ですか?

 

HONDA TL125 BIALS

僕はそんな岩の上を走ったりする技術はないんですけど、探していたところ、いいのを見つけたので引きとっちゃったんです。

程度のいいものが見つからず苦労してやっと見つけたレアな一台なんですけど、仲間と林道に入ったときにはみんなに乗ってもらっています。

:こうしてよくよく見回してみると、クルーザー、ドラッグレーサー、オフロード、そしてトライアルとライダーの走りたい道はほぼ全ていけますね。つまり、行動も、サーキットも、オフロードも全部。

 

いやぁ、まいっちゃいますね。

 

2. 家が欲しいわけじゃない、ガレージが欲しかった

:ご自宅の敷地の大部分をガレージが占めていますけど、最初からこの設計だったんですか?

 

ガレージを作るにはいろいろな条件が必要でした。例えば、新築で購入するには土地代と新築費用で大きな金額を必要としますよね。

じゃ、中古物件を探そうかって探すんですけどガレージを作れそうな物件はそう簡単には見つからなかったんです。

中古物件はガレージを立てられるだけの十分なスペースがなかったんです。当たり前なんですけどね(笑)。

庭を掘り、ガレージを作った大掛かりな工事

:そのことを考えると、この場所は奇跡的でしたね。

 

中古物件で、ガレージを作れる物件って本当にないんです。だって先に家が建ってるでしょ?そして、このコルベットを入れるとなると近所の迷惑になっちゃいけないし。

7ヶ月間探し続けましたよ。何しろ、ガレージを作ることが優先です。正直、家は雨風しのげればいいやと思って。

とにかくガレージが欲しかったんです。クルマとバイク、両方入れないといけませんからね。

どうやって作るのか、工事を見ているとまず基礎作りから始まるんですが、60cm掘って15cm厚になるようコンクリートを流し込み、基礎が出来上がりました。

そこにシャッターがついてガレージができちゃいました。

 

:コルベットに始まり、ここに並ぶ車両も含めて、夢は真剣に願えば叶うってことですね。

 

ガレージの内装はDIYでコツコツと作っていく

 

:ちなみに、いま基礎とシャッターの話で終わりましたが、もしやそのほかはご自身で作っちゃったとか?

 

いやぁ、ホームセンターに通いつめましたよ。スチールと板の間に断熱材を入れたり、床の塗装も自分でやっています。

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3. モーターライフで人生が変わった

夜な夜な飲み歩くような平凡な毎日から抜け出した30代

:クルマにバイクにとモーターライフにどっぷりな感じですが、何がきっかけだったんですか?

 

私はみんなと同じように普通にサラリーマンになって、みんなと同じように夜な夜な飲み歩く日々を過ごしていたんです。

いわゆる”平凡”な生活が38際ぐらいまで続いていました。クルマも好きではありましたが、お金をつぎ込むほどの情熱ではありませんでした。

でもある時、急に『遊びのクルマ』が欲しいと思い立ったことから、まずコルベットを手に入れました。

何と言ってもこの馬鹿馬鹿しいとも言えるようなこのクルマがはるばる海を超えて、そしてどういうわけか私の自宅にある。ずっと乗りたいと思っていた夢のクルマが毎日に目の前にあるんです。

これまで飲み歩くことが中心だった私の人生が、いきなりクルマ中心の生活に一転するんです。

すると今度何が起きたかと言うと、付き合う人間がガラリと変わったんです。

 

:それが乗り物のもつパワーというか、強烈な共感力をもたらしますよね。

 

飲兵衛たちのライフスタイルとは、まったく違っていましたね。

モーターライフを通じた仲間との交流でどんどん知識も経験もブラッシュアップもされていきますし、そうした自然の流れの中でバイクも欲しくなりますし、ガレージも欲しくなって当然ですよね。

Harley-Davidson Breakout

:コルベットから、V-MAX、SEROW、BIALS、そしてこのBreakout。どういう経緯だったんですか?

 

アメ車、という括りで見た時に、ハーレーもはやり強烈なインパクトを与えてくれる乗り物だと思っています。

でも、ハーレーって中古バイクでも200万超えるでしょ?僕は普通のサラリーマンですから驚きましたよ。いま考えてみると、価格面でのインパクトの方が大きかったのかもしれませんが(笑)。

 

:コルベットとハーレー、この2台が並ぶと途端にアメリカの僕ら日本人の感性にはない独特の世界観が漂いますね。

 

コルベットにハーレーが並ぶという絵面に、知らず知らずのうちに憧れていただんでしょうね。

気がついたらハーレーを探し始めていました。いろいろ当たって、見てきたんですけど「これだ!」という100点満点のハーレーとの出会いはなかったんです。

80点までOK、でも残りの20点が足りないがためにどうしても手が出せずにいました。

 

:どのくらいの期間、理想のハーレーを探し続けていたんですか?

 

数年間は探していましたかね。でも求め続けるもんですね、ある日雑誌を開いたら『Harley-Davidson Breakout CVO』が新登場するという記事を目にしたんです。

これは好きかもしれない、ということで実車を見るために半年後、ハーレーのお店に行ったんです。

そろそろ本物の車両くらいお店にあるだろうと。誰だってそう思いますよね。しかしそこに実車はありませんでした。

写真でしか見たことがないハーレー、でも気になるんだったら前払いでどうぞ

それでもやっぱり気になるから、どうすればいいのかお店に人に聞いて驚きましたよ。

「ということでしたら、こちらの注文書にご記入を」

実車を見ても触れてもないのに注文書を書かなきゃいけないってどいうこと?そう思いせんか?

少なくとも日本ではそんな注文通用しませんよ。

 

:ハーレーのCVOはハーレーのどのモデルよりも特別枠なのでそれがまかり通っちゃうんですよね。ハーレーもわかってやってるんだと思います、きっと。

 

CVOは限定モデルになるため、購入するにはまず受付があるということまではわかりました。

でも、さらに度肝を抜かれたのは、事前に注文した人の中には手に入られない落選者もいるというのだから、もう訳がわかりません。

 

:でも、注文書書いたから今ここにあるんですよね、きっと。

 

実際に見てもない触れてもいないバイク、しかも買えるかどうかもわからない。そう、注文書を書いたんです。

 

ハーレー購入時にあるあるの困るやりとり

 

2013年にデビューする予定だったので、2012年12月に注文書を書いて待ちました。

でもショップ店員は「いやぁ、もしかしたらもう遅いかもしれません。でもまぁ、買えるようならまた連絡しますね。」

こんな調子です。

そして3月。ショップから一本の電話があったので「そろそろ」と思いきや違いました。

「”もしかしたら” 買えるかもしれません。」裏を返せば『買えないかもしれない』電話でした。

しかも「あ、ところで、キャンセルはされますか?」なんて聞かれるんですけど、それでもキャンセルはしなかったんですよね。

そして2ヶ月後の2013年5月、ついに「買えますよ!」という電話を受けることができ、これでやっと手に入るんだ、と思っていたんです。

 

:なんだか、この下りはよくある詐欺まがいの商法に近いやりとりを感じます(笑)。

 

まだ続きがあるんです。ハーレーショップの担当者は思い出したようにこう続けました。

「あ、でも8月頃になりますけどいいですか?その頃は、2014年モデルがちょうど公表されますけど。どうしますか?」

 

:普通ではこんなやりとり、許されませんよね(笑)。

 

そりゃないよ、なんて思いつつ次のモデルがもっといい物だったら、なんてことも頭をよぎりましたがこの2013年モデルのBreakout CVOが気に入っていたんでしょうね。断りはしませんでした。

 

:結局、注文してから1年が過ぎて納車の頃には翌年の新モデルが出ている、ってことですよね。

いやぁ待たされましたよ。まぁ、これもアメリカってことにしてるんですけどね。

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ハーレーに乗ると、急がない生き方ができる

:V-MAXもありますが、実際ハーレーとの違いはどこにあると感じていますか?

 

どちらも好きなんですよ。でも強いて言えばハーレーにはある種の独特の乗ってみなきゃわからないフィーリングがあります。

V-MAXに乗っていたときから考えて、大きく違っていることが一つだけあります。

それはハーレーに乗っている人は本当に様々で、いろんな仲間とのつながりが僕の人生を豊かにしてくれたんです。

加えて、ハーレーを所有することによって、急がない生き方を教わったと思います。急いで乗れるものでもないですしね。

 

:ハーレーは馬力がどうこう言わないメーカーですし、スペックよりも乗り手の実際のフィーリングを重要視しているんでしょうね。

 

日々の生活、仕事などに追われいつの間にか自分を忘れていたとしてもハーレーに乗り、仲間と走るうちに、時間を気にせず走れる自分がいる。

同じバイクであっても、ハーレーがどこか違うのはそう言う点なんじゃないかと思うんです。

こうして、クルマやバイク、バイクも国産も好きですし林道も好きだからこそそれぞれの良さが際立っていると感じられるんだと思います。

4. ガレージライフの過ごし方

:このガレージでは普段どのように過ごされているんですか?

 

世の中には豪華絢爛なガレージもたくさんあります。いいですよね。でも僕のはスチールガレージ。

内装も自分でホームセンターに通い詰めてやっと作ったものだし、決して豪華とは言えません。でもこうして楽しめる空間があることで満たされるんですよ。

このガレージでは、時間を見つけてはバイクをいじり、好きな音楽を聴き、そして仲間と集います。

目的はただ楽しむこと、それだけで幸せな時間を過ごすことができます。

5. 隣のライダーがおすすめするツーリングスポット

:おすすめのツーリングスポットはありますか?

おすすめのルート

「道の駅『キララ多伎』から出雲大社までのくにびき海岸道路ですね。この海岸線のルートが最高です。」

道の駅 キララ多伎

出雲大社

 

:出雲でのお食事はどうされていますか?

 

出雲そば羽根屋によく行っています。その近所には荒木屋と言う有名なお店もあってどちらも美味しいですよ。

献上そば 羽根屋 本店

 

出雲そば 荒木屋

取材を終えて:ガレージ文化とアメリカ

コンピューター関連の会社に勤務するKiichiroさんのガレージライフ。夜な夜な飲みある平凡な日々から抜け出すようにアメ車を手に入れるところから、現在のガレージライフにたどり着くまでを語っていただきました。

アメ車、というカテゴリーがあるくらいにアメリカのクルマやバイクはインパクトがあります。

そして、私たち日本人にとってアメリカのガレージ文化は憧れの対象としてあるんじゃないでしょうか。

広いガレージに、大切にしているクルマやバイクがあってそこで工具を握って黙々と作業する。そんなイメージがきっとあるはずです。

アメリカという国はDIYが浸透していて、築100年の家があちこちにあるのですが壊れたら自分で修理するというのが一般的です。

クルマやバイクも同様に、自分でできる範囲のメンテナンスや修理も自ら行うことが多く工具一式揃っていることは珍しくありません。

Kiichiroさんもガレージの内装はDIYで手がけていました。自分の手が加わることでかけがえのないストーリが生まれます。

欲しいものが見つかるまで探し続ける。時間をかけていろんな障壁を解決しながらやっと手に入れた充実感は何物にも変え難い喜びがあります。

ガレージは無理、と最初から諦めてしまっては手に入るものそりゃ無理になってします。

でも「きっとある」と信じて探し続ける。そうしている間に欲しいものを手に入れる手段やアイデアも浮かんでくるはず。そう思えるガレージストーリーでした。

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