バイクの引き起こしが苦手な人、実は多いんです。特に体力に自信のない方や女性ライダーの中には、立ちゴケしてしまった後の引き起こしがネックとなって「せっかく購入したバイクに乗らなくなってしまった」そんな悲しい声もよく耳にするほどです。
確かに体力・筋力は多少必要ですが、コツさえ掴んでしまえば、バイクの引き起こしはそれほど難しいことではありません。ここでは大型バイクでも自分でちゃんと起こせる方法をしっかり解説していきます。
立ちゴケしてからなかなか起こせなかったことはありませんか?バイクを倒してしまい焦ってしまう気持ちはとても良く分かります。なぜ起こせなかったのか、その原因をしることからスタートしましょう!
ギアが入っていない状態で引き起こそうとすると、タイヤが回転してしまうためバイクが動いてしまい引き起こしにくくなってしまいます。ギアが入っていればブレーキを握る作業が減るのでそれだけも力の入り方が大きく変わってきます。
男性ライダーですら腕力だけではビッグバイクは起こせません。バイクを起こす時には、腕だけでなく体の体重も利用して体の面を使って起こすと楽に起き上がります。
引き起こしの方法は何種類かありますが、基本的にバイクと身体は密着させて起こすがコツです。
バイクは倒れた状態から45°くらい起こすまでがもっとも力が必要です。そこまで一気に起こすと後はあまり重さを感じなくなって楽に起こせます。
カーブの途中など路面がパンク(傾斜)していると平らな場所よりも引き起こしが重く、起こしにくくなります。なるべく力が必要ない方向に引き起こすことも大切です。路面状況を落ち着いて観察して、どのように起こすのが楽に行けるのか、いい方法を得るためにも一呼吸おきましょう。
一番ライダーが避けたいと思っているのが、道路での転倒です。例えば、道を間違えてUターンす流時にも操作を誤って転倒。信号が変わって車の波に飲まれ、渋滞を引き起こす。そんな悪夢を抱いてはいないでしょうか?
車道では車両進行方向(後方)に背を向けないことが大切です。二次災害防止のため後方の安全確認をしながら、まずは自分の身の安全確保を行ってください。
一人では対処できないと思ったら、速やかに歩道やガードレールの外側に避難しましょう。安全な場所に移動したら落ち着いて冷静になるために、深呼吸を2回以上してください。この深呼吸が意外と自分を冷静に保ってくれます。
落ち着いたらバイク周囲の安全確認と路面状況をよく観察して、引き起こす向き、方向を決めてください。
バイクが右側に倒れている(サイドスタンドの逆方向)ときはサイドスタンドを出しておくと安心です。ストッパーに当たるまでしっかりサイドスタンドが出ていることを確認しておきましょう。
このサイドスタンドがあると、勢い余って反対側に倒してしまうことを防止することができます。
左側に倒れている場合は、引き起こしているバイクの重さ感じなくポイントがあるので、その時点で反対側に倒さないよう慎重にサイドスタンドを出してください。
サイドスタンドをかけたらハンドルを左側(サイドスタンド側)に切るとバイクが安定します。
ギアがニュートラル状態だと後輪タイヤが回転してバイクが動いて不安定な状態になり、引き起こしにくくなっています。ギアはロー(1速)に入れて車体を安定させましょう。
長距離ツーリングの途中などで荷物をたくさん積載していると引き起こしに苦労します。もし積載したままの状態でバイクを起こせなかったら、重量物やツーリングバックなどは降ろす・外すなどしてなるべくバイクを軽い状態にしましょう。たったそれだけのことで引き起こしが楽になることもあります。
ここで引き起こし方法4種類のコツを伝授しますが、以下の3つは全てに共通するコツです。
これから紹介する引き起こし方法2種類は小柄な方、筋力に自信の無い方、女性にオススメ。これであなたもきっとビッグバイクを引き起こすことが出来ます!
この方法はテコの原理を使い最小限の力で引き起こせること、後方の安全確認・目視をしながら引き起こせることです。
バイクが倒れている逆方向にハンドルを全部切ります。(ストッパーが当たりハンドルが動かなくなるまで切る)
自分の立ち位置は地面側のハンドルバーの延長線上あたりに正対して両手でグリップをしっかり握れるところに立ちます。両足は肩幅くらい開きます。その体勢から両膝を曲げて両手で片側のハンドルグリップをしっかり握ります。
ハンドルを持ち上げて前後輪が接地したことを確認してください。車体が安定して引き起こし易くなります。ここまで出来たらバイクが軽く感じる状態まで一気に引き起こします。
バイクが起きてくるととても重く感じるところがあります。そこさえ我慢すればスッと軽くなるので頑張りましょう!あと少しのところでもし動きが止まってしまいそうになったら、ベルトのバックル辺りの下腹部でグリップエンドを押すと引き起こしの助けになります。この時、腕の力ではなく体の体重をしっかり使ってグッと押し込んでいくイメージです。
左側に倒れていた場合は引き起こしに成功したら慎重にサイドスタンドを出してください。下り坂などで出し方が中途半端だとタイヤが少し動いただけでバイクが倒れてしまいます。
先に紹介した方法との違いは、この方法はバイクに背中を向けて引き起こすことができることです。この方法のメリットは腰をバイクに付けて引き起こせるため背筋と足の力を最大限有効に使えることです。コツさえつかめば最も楽な方法です。
左右どちらでも出来ますが初心者の方はあらかじめサイドスタンドを出しておける右側からの引き起こしに限定しておいてもよいでしょう。勢い余って反対側に倒れる可能性があるくらいに、うまくいけばヒョイっと軽く持ち上がります。
バイクが倒れている逆方向にハンドルを全切ります。(ストッパーが当たりハンドルが動かなくなるまでしっかり切る)
自分の立ち位置は地面側ハンドルグリップ横に「後ろ向き」で両手でグリップをしっかり握れるところに立ちます。前輪側、タンク側どちらに立っても良いです。バイクの形状やご自分の引き起こし易い位置を確認してください。
両足は肩幅くらい開きます。その体勢から両膝を曲げて両手で片側のハンドルグリップをしっかり握ります。
※ここまでは身体の向き以外、両手で片方のハンドルグリップを握る方法と同じです。
ハンドルを持ち上げて前後輪が接地したことを確認してください。車体が安定して引き起こし易くなります。
バイクが起きてくるととても重く感じるところがありますが、乗り切ってください。あと少しでスッと軽くなるので頑張りましょう!腰をタンク(またはフロントフォーク上部)に当てて両手でハンドルグリップをしっかり握ったまま、後ろにのけ反りながら少しずつ後ろ向きで歩きます。バイクに後ろ向きで近付いていくイメージです。不思議とバイクがじわじわと持ち上がっていきます。
サイドスタンドの掛け方が甘いとまた倒れてしまうことがあります。しっかりと確実にサイドスタンドをかけておきましょう。
左右のグリップにそれぞれ手をかけて起こすこの方法は、教習所で教わる引き起こしの基本で誰もが経験する起こし方です。
体力のある男性であればバイクをすぐに起こすことが可能なのですが、バイクの重さが身体にモロにかかるので、小柄な女性にとっては難易度が高い方法とも言えますが、ベーシックな手法なので一応取り上げておきますね。
両手でハンドル左右のグリップをしっかり握ります。このときハンドルを倒れた方向とは逆に切ると起こしやすいのですが、ここでは両手を左右のハンドルに手をかけているので前輪を真っ直ぐの状態にした方が体勢が楽になります。
タンクやシート付近に腰(体側)を密着させて起こしていきます。
両足は「カニ歩き」で少しずつ横移動します。このとき腰がバイクから離れないようにしながら全身を使って起こしていきます。
この方法は結構力が必要だと感じる方法だと思います。次は、体の面を使って起こす方法を紹介しておきます。
片方の手ではハンドルグリップを握り、もう片方の手ではタンデムグリップなどリア部のフレームを掴んで起こす方法です。
この起こし方のメリットは、体の面を使って前に押すので、力が一方向に集中し引き起こしやすいと感じられるはずです。
片手はハンドルグリップ、もう片方の手でシート後部付近の握りやすいタンデムグリップや、リア部のフレームをしっかり握ります。このときハンドルは真っ直ぐ、またはバイクが倒れている方向に切っておきます。起こしやすい方を選択してください。
胸部をガソリンタンク・シートに近付けるまたは密着させて体の面を使うようにして引き起こします。このとき猫背にならないように顔を上げて胸を張った姿勢で引き起こすようにしてください。
少しずつ前に進んで歩く要領で慎重に引き起こしていきます。
バイクが自立するポイントまできて軽くなったらサイドスタンドを確実にかけておきましょう。
トムさんというインストラクターは、その昔から重量のあるハーレーのようなビッグバイクをどのように一人で扱えるようにするのか、誰でも大型バイクを自在に操るためのライディングスキルを広く伝授してきた方の一人です。
その方がここで紹介した引き越し方について、それぞれのパターンでyoutubeでやさしく説明してくれています。参考にしてみてください:
一度で起こせない場合など、何度も引き起こしに苦労しているうちに筋力や体力を奪われてお手上げになることもあるかもしれません。
そんな時は通りがかりの人に助けを求めてください。両手を大きく振って助けを求めるのも有効です。恥ずかしいことではありません。困った時はお互いさまですから。
この時、もっとも気をつけなければならないのが二次災害です。後続車両の衝突などを回避するための基本的な方法は次の通りです。
特に夜間であったり、見通しの効かないカーブの途中などは大変危険な状態と言えます。万が一に備えて発煙筒、三角表示板、懐中電灯、反射材を身に付けておくことをオススメします。
高速自動車国道及び自動車専用道路上の故障、ガス欠などでバイクを駐車する際、三角表示板を表示していないと違反切符を切られてしまいますし、何より表示しないと自分自身が危険にさらされます。リスクマネジメントの策として携帯しておきたいアイテムです。
バイクを転倒させてしまった場合、ガソリンが漏れてしまうことも多々あります。エンジンが停止する原因はキャブレターとインジェクションによって異なるので、それぞれ解説します。
キャブレター内のフロートからガソリンが漏れることにより、燃焼室にガスが混入している可能性があります。また、ガソリンタンクから燃料が漏れ、プラグが被ってエンジン始動ができないことも考えられます。
ガソリンが漏れている場合、原因の箇所をウエスでふき取り、再度漏れてこないかを確認します。また、バイクを起こしてから3~5分程度時間を置くと、キャブレターフロートの油面が落ち着きます。フロートの油面高が落ち着いたらキルスイッチをオンにして、エンジン始動を試してみましょう。
※このときのコツとしてチョークはオフ、アクセルは全開にしてからエンジン始動するとかかり易くなります。
インジェクション車は角度センサーが搭載されているため、一定の時間、危険防止のためにコンピューター制御がかかり、電源を強制的に遮断していることがあります。
ガソリンの漏れがないかを確認したら、キルスイッチとキーをオフにし、完全にエンジンを停止状態にします。そして再度、キルスイッチとキーをオンにして、エンジン始動を試しましょう。ほとんどのインジェクション車の場合は、この作業で角度センサーが解除され、エンジンが始動出来ます。
※センサー類の損傷が原因でエンジン始動ができない場合は、応急処置が困難なため、レッカーを依頼してバイクショップで修理してもらいましょう。
いざというとき慌てず自分のバイクを起こすためには、実際に起こしたことがあるという『経験』が必要です。教習所のバイクと自分のバイクは勝手が大きく違うものです。
かと言って、自分のバイクで練習するのは抵抗があると思います。傷をつけずに倒すにはマットを敷いてから練習するなどの方法があるのでいくつか紹介しておきましょう。
ちょっとした下準備は必要ですが、自分のバイクを自分で引き起こせた『自信』はバイクの旅のお守りになります。初めての引き起こしが転倒した時だとパニックになってしまいますが、経験したことがあれば落ち着いて対処することができます。
バイク初心者やビッグバイクに乗り換えて日の浅いライダーにとって立ちゴケとそれに伴う引き起こしは避けては通れない通過儀礼とも言えます。
転ばないのが一番なのですが、もし転んでしまっても焦らず、まずは自分の安全確保と深呼吸をしてからバイクを起こしてあげてください。
起こせないときは勇気を出して、手を上げて助けを求めてください。恥ずかしいことではありません。大丈夫、必ず優しい人やライダーはいるものです。渡る世間に鬼はいません。
白バイやツアラーに装備されているサイドバンパー(セーフティーバー)は万一の転倒時に身体を守ってくれるだけでなく、転倒時の角度が浅くなり引き起こしがやり易くなります。
装着できる車種は限定されますが、怪我防止や引き起こし時のことを考慮して装着することはとても有効だと思います。