『立ちゴケ』とは、二輪車による転倒の一種で、バイクにまたがり停車やその前後において左右どちらかに転倒することを意味します。またあるいは『ライダーの恥』であり『心的ショック』と感じているライダーもいるでしょう。
停車時や低速時に、気を抜いた瞬間にバイクの傾きを制御しきれず、バイクに思わぬキズをいれてしまうことはライダーであれば一度や二度あってもおかしくはありません。
ベテランライダーでさえも起こしてしまう立ちゴケ。その原因と予防策を紹介しましょう!
過去に立ちゴケをしたことはありますか?「はい、あります(泣)」こう答えられるライダーはバイク乗りの通過儀礼が済んだとも言えるでしょう。
とはいえ、立ちゴケはあらゆるパターンで起こりえます。時には「まさかこんなところで!?」というハプニングもあるでしょう。まずは、立ちゴケがよく起きるパータンから見ていきましょう。
重たいバイクを取り回す時、とくに初動時には足にぐっと力がはいります。このときの足場の状況が滑りやすいと、たちまちバランスを崩し「ガチャ」っと倒してしまいがちです。
例えば、雨の日に限らずとも、晴れの日でもお店のまえに撒かれたお水などでも足を滑らせることもあります。舗装されていない砂利道や、砂利の駐車場にもとくに注意をしたいところです。
滑りやすいだけでなくとも、思わぬ『段差』でバランスを崩すことがあります。路側帯にあるわずか数センチのコンクリートの段差や、石ころ一つでさえもバランスを崩してしまうことがあります。
ロングツーリングや、キャンプツーリング用の荷物が重すぎるとバランスを崩しやすくなります。とくに、上に積み上げかつ上に重心がくるほどバランスを崩しやすくなります。
重いものはなるべく低い位置に、かつ最小限の荷物に抑えるようにしておきましょう。
停車前や、出発前に気がついたら仲間が立ちゴケしていること、ありませんか?先にあげた、滑りやすい路面状況はもちろん、スタンドが甘いことが原因で立ちゴケすることがあります。
勾配のきいたみちでは、バランスのとりかたが平地とはややことなります。平地の感覚でバイクを起こした瞬間に、勢い余って「立ちゴケしてしまった!」という経験者も多いはずです。
ギアをいれたままセルを回したことで、バイクがいきなり前進することでも立ちゴケを引き起こします。また、クラッチレバーをいきなり離してしまいエンストして倒れることもあります。
クラッチレバーを握るタイミングが遅れたことでエンストをおこし倒れることがあります。
フロントブレーキだけで止まるクセのある人によく見られるパターンです。フロントブレーキをかける際にハンドルが左右どちらかにふれるだけでもバイクは不安定になります。リアブレーキもしっかり利用してみましょう。
Uターン時のポイントは、駆動力を切らさないことです。クラッチを切りすぎたりすることで駆動力が失われ、イン側に切れ込みエンストし、結果として立ちゴケしてしまう、というケースがあります。
これら5つのパターンは、じつはどこの道路を走ってもいたるところにあります。またそのこともよく知っているはずなのに、なぜかふと気が抜けた瞬間にこれらの立ちゴケのパターンを忘れてしまいます。なぜでしょうか?
濡れている路面や、砂利道など滑りやすい状況やUターンの注意点など熟知しているベテランライダーですら、立ちゴケしてしまうことがあります。もしその理由があるとすれば、心と体のコンディションに問題があると言えるでしょう。
集中力が途切れ、気が抜けた瞬間に立ちゴケは起きるものです。そうなる前に、前兆を察知することで予防することができます。
仕事でもプライベートでも、疲れたら休憩するのが一般的です。しかし、立ちゴケは集中力が途切れたときに誘発されるため、ライダーはいかに疲れないかを考えてコンディションをコントロールする必要があります。
例えば、喉がかわいてから水分を補給するのではなく、乾く前に水分補給するだけでも体力が持続します。こまめに休憩をとり、水分補給や簡単な軽食でエネルギー補給することをおすすめします。
眠気対策にコーヒーがよく利用されます。カフェイン効果がある一方で利尿作用が強く働くこともあります。カフェオレをチョイスする場合の注意点として、牛乳はリラックス効果が働き眠くなることがあります。上手にコントロールしましょう。
水分補給としては水がもっとも肝臓に負担がかからないため体力も持続しやすいといえるでしょう。
我々ライダーは『メガ盛り』『激辛』というワードに挑戦心を掻き立てらがちですが、これがのちに眠気や体調不良の引き金となることも少なくありません。
もしそれでも「食べる」と決めたのであれば、腹をくくって午後からは精神力でコントロールをしなければなりません。
ツーリング前はまるで修学旅行前の中学生のように、興奮して眠れないことがあります。特に、早朝から始まるツーリングともなると早く寝たいところですが、いつもと違うとそうもいかないこともあります。生活リズムを整えることで、体だけでなくメンタルもコントロールしやすくなります。
できれば一滴も飲まないことをおすすめします。なぜなら、アルコールは立ちゴケの原因である集中力の欠如をもたらしやすい物質だからです。
アルコールを飲むとどうなるのでしょうか?まず胃や腸で吸収され血液に溶け込みます。吸収されたアルコールは血液の流れに乗って、脳みそまで運ばれます。アルコールが脳内に到達すると、あらゆる脳の機能を麻痺させてゆきます。視覚、聴覚、バランス中枢、集中力、判断力など、バイク走行に必要なすべてを麻痺していきます。
とうぜん、走行中にアルコールを含むライダーはいないでしょうが、前日のアルコールが分解されないままであると非常に危険です。特にバイクは判断力が問われるため、冴えた頭でクールに乗るのがバイク乗りのマナーでもあります。
寝る前に何か飲むとしたら、心静まるハーブティーをおすすめします。
こかしてしまったものは仕方がありません。頑張りすぎて踏ん張ると体を痛めたり、バイクを守るために倒れるバイクの間に足を入れると骨折することもあります。限界をすぎたらすんなり倒してしまう方がよほどがスマートです。
ただし、いつもスマートに落ち着いているとは限りません。倒した時には、まず『深呼吸』をして周りの安全を確認してからバイクを起こしましょう。
借りているバイクを傷つけてしまうほど、体裁の悪いことはありません。そんな時はどうすればよいのでしょうか?
レンタル会社もそこがもっとも大きなリスクとなるため、保険に加入しています。立ちゴケの傷を修理するための見積もりからはじまり、金額が決定すれば保険で対応することができます。
ただし、多くの場合で免責金額が設定されています。例えば免責金額が5万円の場合は、5万円以内であればその金額を、5万円を超える金額であれば5万円まで実費で支払う義務が生じます。
立ちゴケは、ときにバイクの傷よりも精神的ダメージが大きくなることがあります。でもライダーは明るく前を向いてまた走り出さなければなりません。立ちゴケは誰でも経験し、その経験でもっと上手くなります。
もし仲間とのツーリングで立ちゴケしたら、「くそーやっちまったぜ、みんなダサい俺の写真とってくれ〜」ぐらいが楽しく和やかにツーリングを楽しむことができます。
もしパーツ交換で費用がかさむとしても、『カスタム』できたと思えばさらに楽しくなります。思い出に残る愉快なツーリングを作ることがなによりも大事です。