革ジャンは暖かそうにみえて、意外と寒かったりします。特に走っているといろんなところから風が入ってきます。それでもレザージャケットを着ていたいのは、やっぱりカッコいいから。
筆者は、自らライダースジャケットの制作を手掛けてしまったほど、レザージャケットがライダーにとって重要なアイテムだと考えています。
意外と寒い革ジャンでも、防寒対策さえしておけば冬のツーリングでも十分快適に過ごせます。長年いろいろと施工錯誤してきてもっとも有効だった手段をいくつか共有したいと思います。冬場も革ジャンで過ごしたいけど今日も凍えている、そんなライダーはぜひ読んでみてください!
もちろん冬ツーリングでも革ジャンは大活躍します。また冬用の防寒仕様の暖かい革ジャンもあります。難点は『スキマ風』が入り込んで体が冷えてしまうことです。冬のツーリングでも革ジャンを楽しむための対策を見ていきましょう!
もともとは空軍の爆弾投下係(ボンバー)の寒さ防止に作られたジャケットです。
上空は地上よりもはるかに寒いので、戦時中にたくさんの防寒ジャケットが生産されました。素材としてレザーが主流だったことを考えると機能的にも価格的にも合理的な選択だったことがうかがえます。
現在はファッションとしても普遍的なスタンダードとして馴染み深いのですが、空の寒い環境で働く軍人のために作られたジャケットは、ライダーにとっても防寒ジャケットに十分なります。
<STAY RIDER一押し!ボンバージャケット>
冬ツーリングの防寒の要は『隙間風の侵入』をどう防ぐか、というテーマになってきます。
大きく『フロントジッパー』『首元』『袖口』、そして『腰回り』の4箇所がポイントです。どんな対策があるかそれぞれ見ていきましょう。
ジャケットのジッパー部のわずかな隙間から、思いのほかたくさんの冷たい風が流れ込んできます。そのため、多くのライダースジャケットにはジッパーの裏側に3〜4センチほどの当て革が施されていることがよくあります。それによって風の侵入を防いでいますが、冬の風は遮れるだけ遮りたいものです。
その点では、ダブルのライダースジャケットの方が防風性に優れています。
逆に、シングルのライダースジャケットはその特性から、春夏用には適しているとも言えます。
フロントジッパーからの風の侵入はダブルのジャケットで防ぐことができました。じゃ首元は何がいいでしょうか?
首の防寒対策には、マフラーやネックウォーマーが定番です。まずマフラーのメリットは、だいたい一つや二つ持っているアイテムなのですぐに使えるという点です。しかし強くお勧めできないポイントもあります。
万が一マフラーが首から解けてしまいタイヤに巻き込まれることがあります。首が瞬時に締め付けられそのまま転倒してしまうような、大きなリスクがつきまとう点を考えると強くおすすめはできません。
過去にも死亡事故は何件も発生しているので、リスクとその代償が大きいことを考えるとネックウォーマーに着地しています。
ネックウォーマーもどんなものがいいのか?これも自分の着用感を中心に考えていくと自分にぴったりのものが見つかります。
いくつか持っているのですが、結局よく使っているのは薄くて鼻くらいまで覆うことができて、それでいて苦しくないネックウォーマーです。
普段はフルフェイスを利用しているので分厚すぎるとヘルメットのベルトを締めるのが窮屈になったり、顔まで覆った時にヘルメット内がとても窮屈になりました。
フルフェイスは何しもしなくてもタイトにつくらているので、薄手のネックウォーマーが快適だと感じています。
丈が短い首だけ覆えるネックウォーマーも試しました。が、ヘルメット内のわずかな隙間から細い風が微かに入ってくるのを感じます。これがなかなかと寒いし、走行中にも気になって運転に集中できないというデメリットがあります。それで結局バイクに乗る時には使わなくなりました。
肉厚なものが好みの場合はこうした製品もあります。例えばジェットヘルなんかを利用している人にはこのくらい肉厚な方が向いているかもしれません。
自分のヘルメットや快適さを感じられる条件を満たせそうなものからチョイスしてみてください。
袖口から入ってくる風もなかなかと寒さを感じさせてくれます。ライダースジャケットであれば、大体袖口にジッパーがついているのでここをしっかりと閉めておきましょう。
そして締めた状態から、少し長めの丈のグローブをつけると風の侵入を防ぐことができます。
冬場なのでウィンターグローブがおすすめです。時々真冬にもメッシュグローブで過ごしている強者がいるんですよ。ある時聞いてみたら、「え、バイクグローブに冬用ってあるんですか?」という調子で、ウィンターグローブがあることを知らないビギナーが意外とたくさんいます。
もし注意しておきたいことがあるとすれば、冬用は夏用に比べると中に綿が多く入っていることから分厚くなるため、操作感が変わり人によっては運転しづらいなぁと感じるかもしれません。最初は違和感がありますが、慣れてくると「こんなもんか」です。
GOLDWINのウィンターグローブは、プロテクターが装備されているだけでなく、防水仕様になっているので突然の雨に打たれた場合でも安心です。もちろん、防風性、透湿性などライダーの欲しい機能を備えてくれています。アウトドアな人には馴染み深いゴアテックス素材を起用しているところもポイントが高いです。
もし「いつものグローブで何とかしたい!」という場合には、インナーグローブというものがあるのでこれを試してみるとよいでしょう。
近場や標高の低い下道のツーリングにはこうしたインナーグローブだけでも十分寒さを防ぐことができます。
操作感を重視したければ、インナーグローブで防寒対策はおすすめです。ただロングツーリングの場合には寒さを防ぎきれないケースもあります。
例えば高速道路のような標高の高いところ、あるいは日陰が多くかつ標高が高い山道など気温が下がる道も通ることもあります。そんなロケーションを長時間走っていると、指先がちぎれるような感覚をきっと味わいます。
そんな時に、『ウインターグローブがあればよかった』とか『グリップヒーターがあれば快適だろうなぁ』とかいう夢を見始めます。
そういうストレスを抱えて走るくらいなら、グローブチェンジできるようにウィンターグローブがあるとやっぱり便利ですよね。
もっとも難しいのはこの腰回りからの風の侵入対策でした。気になるのは後ろの腰です。セパハン(セパレートハンドル)の仕様だったり前傾姿勢になるようなバイクだと特に腰の裾が上に上がりがちになり、そこから風の侵入があります。
私もセパハンのバイクを愛する一人なので腰回りの風侵入にはいつも悩まされてきました。
対策の一つとして、まず丈が長めのシャツを着てしっかりとボトムスに入れて走行中にはだけないようにすることです。
そしてもう一つの対策としては、つなぎのインナーにすることです。
つなぎのインナーは、腰回りの風の侵入による寒さをだいぶ軽減してくれます。ただ、インナーなので革ジャンの下がこのインナーだど何だか気合いが入りません。なのでこの上にもう一枚着たくなります。とはいえ、革ジャンを最後に羽織るのでできるだけ薄く仕上げたいところです。
もしそこまでタイトなジャケットでなければ、スウェットやパーカーもコーディネートしやすいです。
冬場だと裏地がフリースになっているようなものも暖かく寒さ対策になりますが、これもウィンターグローブと同様に分厚くなるのでジャケットのサイズと着用感をしっかり吟味しておく必要があります。
ついでにもう一つ、腰回りの寒さ対策に講じてきたのはこれです。
これを腰にペタペタと貼っておくと1日中暖かいので電熱ウェアがない人には特におすすめです。
保温性と防風性に優れている上に軽い、そんなレザーがあるとしたらシープスキンだと思います。柔らかいという点で肩周りの可動域もゆとりがあり楽な着用感が特に気に入っています。
それでなくても寒くて体がガチガチになりがちなので、こうした柔らかな質感でありながら保温性も防風性もあるジャケットは本当に重宝します。
牛やホーススキン(馬革)のジャケットも持っているのですが、そのハードな質感からくる硬さや重さで今はではシープスキンジャケットの利用頻度がダントツに高いです。
もしシープスキンにデメリットがあるとしたら、それは価格かもしれません。シープスキンは他のレザー素材に比べて単価が高くなる傾向があります。
ライダースジャケットブランドの老舗『Schott』のボンバージャケットを2つ、牛革とシープスキンのものを比べてみるとやはりシープスキンの方が1.5〜2倍高い価格になっています。
レザージャケットの着心地を重視するとシープスキン、ただ柔らかいため何十年と着用したい場合には、少々重くなりますがタフな牛革がよいと思います。
上記には「革ジャンは防寒着として有効なのか?」「どうすれば革ジャンでも寒さを防げるのか?」「革ジャンが冬場に寒い理由は一体何なのか?」について筆者の経験も交えながら一緒に考えてきてました。
革ジャンの寒さ対策として有効なのは、
この二つのポイントを押さえておくことで革ジャンでも冬を快適に過ごせるようになります。ここまでウェア周りの対策を紹介してきました。この辺りで、バイクに施せる防寒対策を紹介してみたいと思います。
ここまでは、革ジャンの着方や周辺アイテムで工夫を凝らして対策を考えてきましたが、次に考えてみたいのはバイクに工夫を凝らして行う防寒対策です。
そもそもの風を遮れる手段としてはどのようなものがあるのでしょうか?
アメリカンバイクに限らず、ネイキッドにも車種ごとにスクリーンは社外パーツメーカーが用意してくれているケースが多数あります。
MT09 TRACERというオンロードのアドベンチャーバイクにも乗っていたのですが、上半身をカバーできる大きなスクリーンがあるだけでこんなにもストレスがないのかと感動したのを今でも覚えています。
上半身に風を受けないというのは寒さだけでなく、肉体的にも風に耐える必要がないのでそれだけ体力を温存することにつながります。
大きなスクリーンであればあるほど、体にあたる風は遮られるのですが美観も大事にしたいと思うと、効果とスタイルとのせめぎ合いでどう折り合いをつけるかはオーナーのセンスに委ねられます。
もしスポーツバイクに乗っている場合には、『バブルスクリーン』と呼ばれるレーシーなスクリーンがあります。
スクリーンのアーチが純正よりも高く設計されていて、これにより顔(ヘルメット)に当たる風を激減させることにつながるため走行が楽になります。
気になる人はぜひ試してみてください。
バイクの車種によって、取り付け穴の位置や形状が違うのでバイクの種類、年式などから自分のバイクにフィットするものを選ぶようにしましょう。
革ジャンのスタイルでも十分に冬は過ごせます。ちょっとずつ快適性を追求していけば真冬のツーリングもいつのまにか快適なものになります。
むしろ冬の方がバイクも調子がよかったりするので、冬でもバイクが楽しいのはバイクライフにおいて充足感は数段上になります。
革ジャンスタイルを愛するあなたにもぜひ、真冬のライドを楽しく過ごしてもらえると嬉しいです。ぜひいろいろと試してみてください。